
日本人は「海外REIT」を見逃している?
日本では、投資信託や日本国内のJ-REITに投資する人は増えてきましたが、海外REIT(Real Estate Investment Trust) への投資はまだまだマイナーです。
しかし、世界には米国を中心に多様なREITが存在し、商業施設や物流倉庫、データセンター、ホテル、ヘルスケア施設など幅広い不動産を保有・運営しています。
この記事では、海外REIT投資の魅力とリスクを徹底解説し、日本人投資家が知っておくべきポイントをまとめます。

海外REITとは?日本のREITとの違い
海外REITは、海外の不動産を対象に運用される不動産投資信託です。
特に米国REITは市場規模が大きく、以下の特徴があります。
- 上場銘柄数が多い:米国では約200銘柄以上のREITが上場
- セクターが多様:住宅、物流、データセンター、ヘルスケア、リテール、オフィスなど細分化
- 高い分配利回り:平均で3〜5%程度、場合によっては8%超も
- 流動性が高い:株式と同様にリアルタイム売買可能
日本のREITは約60銘柄と限定的で、オフィス・商業施設中心。
海外REITはポートフォリオ分散の面で非常に魅力的です。
海外REIT投資の魅力
1. 高い分配金利回り
海外REITは、法律で収益の90%以上を分配する義務があるため、配当利回りが高め。
特に米国REITでは3〜5%、景気敏感セクターでは8%以上も狙えます。
2. インフレヘッジ効果
不動産賃料はインフレに応じて上昇する傾向があり、インフレ局面でも価値が下がりにくい。
特に物流や住宅系REITは、長期的に安定したキャッシュフローが期待できます。
3. セクター分散が容易
日本のREIT市場では選択肢が少ないですが、海外REITではデータセンターREIT(例:Equinix)、セルタワーREIT(例:American Tower)など成長産業と連動する銘柄も選べます。
4. 為替差益も狙える
円安局面では、ドル建て資産の評価額が上昇。
為替ヘッジなしで運用することで、キャピタルゲイン+為替益のダブルメリットが狙えます。
海外REIT投資のリスク
1. 為替リスク
円高になるとドル建て資産の価値が下がるため、為替差損が発生します。
対策としては、為替ヘッジ付き商品やドルコスト平均法を活用。
2. 金利上昇リスク
REITは借入を活用して不動産を購入するため、金利上昇局面ではコスト増で利益が圧迫されやすい。
特に米国ではFRBの政策金利動向に注意。
3. 景気変動リスク
景気後退時にはオフィスの空室率が上昇、商業施設の賃料も下落する可能性あり。
景気敏感セクターへの集中投資は避け、セクター分散が重要。
4. 税制の違い
海外REITの分配金は外国課税+日本の課税がかかる(二重課税)。
ただし外国税額控除を使えば日本での税負担を軽減可能。
投資方法|海外REITへのアクセス手段
1. 海外ETFを活用
- 代表例:
- Vanguard Real Estate ETF (VNQ)
- iShares Global REIT ETF (REET)
- 1本で世界中のREITに分散投資可能。
- 日本の証券会社からも購入可能(SBI証券、楽天証券など)。
2. 投資信託を利用
日本円で購入できる海外REIT投信も多数存在。
積立NISA対象商品もあり、初心者にはおすすめ。
3. 個別REIT銘柄を直接購入
米国株口座を開設すれば、American Tower、Prologisなど個別REITに直接投資可能。
より高いリターンを狙うなら個別選定も有効。
ポートフォリオ戦略|どう組み込むか?
- コア+サテライト戦略
- コア:米国株インデックス、債券
- サテライト:海外REIT 10〜20%程度
- セクター分散(住宅+物流+データセンター)でリスク分散
- 毎月の積立+再投資で複利効果を最大化
まとめ:海外REITは「知らないと損」な選択肢
- 高配当、分散投資、インフレ耐性というメリット
- 為替・金利・景気リスクへの対策は必須
- ETFや投資信託で手軽に投資可能
海外REITは、日本の投資家がまだ十分に活用していない資産クラス。
円安が続く今こそ、ポートフォリオに組み入れることで安定したインカムゲイン+資産防衛が狙えます。
次のステップとして
海外REIT投資おすすめETF徹底比較|VNQ vs REET vs XLRE
海外REIT投資はETFで始めるのが王道
海外REITに投資するなら、まず検討したいのがETFです。
ETFなら1本で複数のREITに分散投資でき、手数料も低め。日本の証券会社から簡単に購入できます。
今回は、人気の高い3つのETFを徹底比較します。
- VNQ(Vanguard Real Estate ETF)
- REET(iShares Global REIT ETF)
- XLRE(Real Estate Select Sector SPDR Fund)
1. ETF基本情報比較
| ETF名 | 運用会社 | 対象市場 | 銘柄数 | 信託報酬(経費率) | 分配金利回り(目安) |
|---|---|---|---|---|---|
| VNQ | Vanguard | 米国REIT | 約160銘柄 | 0.12% | 約3.7% |
| REET | iShares | 世界REIT(米国比率約65%) | 約300銘柄 | 0.14% | 約4.1% |
| XLRE | SPDR | 米国REIT(セクターETF) | 約30銘柄 | 0.10% | 約3.6% |
- VNQは米国REIT市場の王道
- REETは国際分散が効く
- XLREは大型銘柄比率が高く値動きが安定
2. パフォーマンス比較(過去5年)
| ETF | 年率リターン(5年平均) | 最大ドローダウン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| VNQ | 約+4.5% | -40%(コロナショック時) | 米国REIT市場の動きをほぼそのまま反映 |
| REET | 約+3.8% | -42% | 海外比率が高いため通貨分散効果あり |
| XLRE | 約+5.0% | -38% | 大型優良REIT比率が高く安定的 |
※過去の実績であり将来の成果を保証するものではありません。
3. メリットとデメリット
VNQのメリット・デメリット
メリット
- 米国REIT市場をほぼ網羅
- 出来高が多く流動性抜群
- 信託報酬が低い
デメリット
- 米国市場に集中 → 米国経済に強く依存
- 為替リスク(円高時に下落)
REETのメリット・デメリット
メリット
- 世界REITに分散 → 日本や欧州REITも含まれる
- 為替分散効果あり
デメリット
- 米国外のREIT比率はパフォーマンスが劣後する場合あり
- VNQよりやや経費率が高い
XLREのメリット・デメリット
メリット
- 大型優良REITのみで構成されており値動きが安定
- パフォーマンスが比較的高め
デメリット
- 分散度合いが低く、銘柄数が少ない
- 特定銘柄への依存度が高い(上位10銘柄で約70%)
4. どの投資家におすすめか?
| タイプ | おすすめETF | 理由 |
|---|---|---|
| 米国REIT市場をまるごと買いたい人 | VNQ | 王道でコストも低い |
| 為替分散もしたい人 | REET | 世界中のREITに投資可能 |
| 安定性重視・大型銘柄好き | XLRE | 優良REITのみで値動きマイルド |
5. 投資戦略:どう組み合わせる?
- 基本は VNQ をコアとして積立
- サテライトで REET を少額入れて国際分散
- 市場環境が不安定なときは XLRE にシフトして守りを固める
まとめ:まずはVNQから始めてみよう
- 海外REIT投資の第一歩はVNQがおすすめ
- 為替リスクを考慮しつつ、長期積立+再投資で複利効果を狙う
- 慣れてきたらREETやXLREでポートフォリオを拡張
次は
【完全保存版】海外REITおすすめ銘柄ランキング|セクター別比較と投資戦略
個別REIT投資で一歩先の分散投資
ETFは便利ですが、「もっと高配当を狙いたい」「特定のセクターに集中投資したい」という投資家には個別REIT投資が魅力的です。
この記事では、人気の海外REITをセクター別にピックアップし、特徴・配当利回り・リスクを徹底解説します。
1. 物流・倉庫REIT|Eコマースの成長で追い風
| 銘柄名 | ティッカー | 利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Prologis | PLD | 約3.3% | 世界最大の物流REIT。AmazonやUPSが主要テナント。 |
| Rexford Industrial | REXR | 約2.8% | 米西海岸の物流施設特化。高稼働率で成長中。 |
ポイント
- Eコマース拡大で需要増加
- 景気後退にも比較的強い
- 成長+安定を両立するセクター
2. データセンターREIT|AI時代のインフラ銘柄
| 銘柄名 | ティッカー | 利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Equinix | EQIX | 約2.2% | 世界最大のデータセンターREIT。AWS、Google Cloudなどが顧客。 |
| Digital Realty | DLR | 約3.7% | 世界各地にデータセンターを展開。利回り高め。 |
ポイント
- AI・クラウド需要で長期的に成長期待大
- 初期投資が大きく金利上昇局面では株価が下がりやすい
- 長期保有向き
3. セルタワーREIT|5G普及の恩恵を受ける
| 銘柄名 | ティッカー | 利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| American Tower | AMT | 約3.5% | 世界最大の通信タワー運営会社。グローバル展開。 |
| Crown Castle | CCI | 約5.5% | 米国内に特化。高配当だが成長率はAMTに劣る。 |
ポイント
- 5G・IoTの拡大で安定収益
- 長期契約が多くキャッシュフロー安定
- 金利上昇局面では株価が調整しやすい
4. ヘルスケアREIT|景気に左右されにくいディフェンシブ資産
| 銘柄名 | ティッカー | 利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Welltower | WELL | 約3.6% | 高齢者向け住宅や医療施設を運営。安定配当。 |
| Healthpeak Properties | PEAK | 約5.8% | 病院や研究施設中心。利回り高め。 |
ポイント
- 高齢化社会で需要安定
- 景気後退に強い
- 配当狙いのポートフォリオに最適
5. 商業施設・リテールREIT|景気回復局面でリターン拡大
| 銘柄名 | ティッカー | 利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Simon Property Group | SPG | 約6.3% | アウトレット・モール最大手。高配当銘柄の代表格。 |
| Realty Income | O | 約5.8% | 「毎月配当」を行う有名REIT。長期投資家に人気。 |
ポイント
- 高配当でインカムゲイン狙いに最適
- 景気敏感セクター → 景気後退時は株価下落に注意
投資戦略:どうポートフォリオを組むか?
- コア:物流・データセンター・セルタワー
→ 成長セクターを中心に据えて長期保有 - サテライト:商業施設・ヘルスケア
→ 高配当+ディフェンシブ要素を加えてバランスを取る
例:
- PLD 30%
- EQIX 20%
- AMT 20%
- WELL 15%
- O 15%
まとめ:個別REITは「セクター分散」がカギ
- 成長セクター(データセンター・物流)で資産増加
- 高配当セクター(商業施設・ヘルスケア)で安定収入
- 金利動向や景気サイクルを見ながら比率を調整
ETFと併用することで、より柔軟なポートフォリオが作れます。
















